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   曹洞宗
   主人公

 みなさんは、自分の人生を生きていますか?自分の人生の主人公は自分ですか?
こんな問いを投げかけられると、ドキッとしますね。
 むかし瑞巌(ずいがん)というお坊さんがいました。毎日自分に向かって「主人
公!」と呼びかけては、自分で「は〜い」と返事をしていました。
 「ちゃんと目を覚ましているか」
 「は〜い」
 「人にだまされないようにな」
 「はい、は〜い」
と毎日ひとり言を言っていたそうです。
 とても和やかなエピソードですね。ですが、少し我が身に置きかえて考えてみる
と、ハッとさせられます。
 私たちもうっかりすると、ボーッとして時代や世間に流されてしまいがちです。
また、巧妙な言葉や「それがいまの常識です」なんて言葉を鵜呑みにしてしまいが
ちです。自らが自分の人生の主人公として、毎日を過ごしたいものです。

   湧き出る思い

 座禅をしていると、ついつい考えごとが湧いてきます。
 道元さまがお示しになった「非思量」(ひしりょう)とはほど遠く、いつの間に
か、思いが湧いてきます。さらにその思いが物語にまで発展してしまうのも困りも
の。
 頭の中で悲喜交々(ひきこもごも)の物語が展開してしまいます。心が迷走する
のに従って、不思議なことに姿勢まで崩れてきます。これもまた困ったことです。
 「いやいや、これはいかん!」と頭を振って、姿勢を正しくするのですが、これ
も束の間。知らず知らずにまた思いが湧いてきます。
 「禅苑清規(ぜんねんしんき)「座禅儀」には次のように書いてあります。
 「思いが起こったら、それに気付きなさい
  気付けば、その思いは消えていきますよ」
 まずは自分の思いにひき込まれず、率直にその思いに気が付いていくことなので
すね。そして淡々と姿勢を正していきましょう。

   柔らかい身体から

 あるお寺の摂心(せつしん・一日中座禅をする修行)に参加した時のこと。
身体が硬くてうまく足が組めない私は、痛いのを我慢して根性で座禅をしていまし
た。脂汗タラタラです。それを見かねた和尚さんが、「まずは座禅を組む前の準備
運動が必要だね」と、ストレッチ法を教えてくださいました。
 足首を柔らかくする運動から、股関節の柔軟性を高め、丁寧にゆっくりと身体全
体をほぐしていきます。眉間にシワを寄せて我慢して座るのでなく、「安楽の法門
」(『普勧座禅儀』(ふかんざぜんぎ)より)として座る。目からウロコが落ちる
ような体験でした。
「心を柔らかくするのは難しいから、まずは身体から柔らかくしてゆくのですよ」
 和尚さんの柔らかな微笑ととともに、その言葉は深く私の心に刻まれています。